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2025 / 09 / 05 09:00
🌕 お月見団子はペットに与えていいの?

──十五夜の文化とペットの健康を考える
もうすぐ「十五夜」ですね。
「せっかくならペットにもおすそ分けしたい」──そんな気持ちから
「お月見団子を犬や猫に与えても大丈夫?」
というご質問をよくいただきます。
📌 結論まとめ(先に答え)
・お月見団子は 犬・猫・ウサギ・カメ・フクロウすべてNG
・理由は「糖質や砂糖を消化できない」「栄養的な意味がない」ため
・代わりにペットに合った秋の食材で工夫するのが正解
🐶 犬・🐱 猫
犬や猫は唾液にアミラーゼを持たず(アミラーゼ=でんぷんを分解する酵素)、口の中ではデンプンを消化できません。
膵液に含まれるアミラーゼに頼っていますが、人より少なく、特に猫は肉食動物ゆえ糖質処理が極めて苦手です。
白玉粉(デンプン)と砂糖でできたお団子は消化器に負担をかけ、下痢や嘔吐の原因になります。
さらに丸呑みによる誤嚥の危険もあるため、与えないことが安全です。
🐇 ウサギ
ウサギは草食性で、繊維質を腸内の盲腸発酵でエネルギーに変えています。
さらに「盲腸便(栄養を再吸収するための特別な便)」を食べ直す習性があり、ビタミンB群や必須アミノ酸を取り込み直します。
この高繊維に特化した仕組みのため、小麦粉や砂糖といった高デンプン食は腸内細菌のバランスを崩し、鼓脹症や消化不良を招きます。
👉 腸の健康維持の観点からも団子は不適切です。
🐢 カメ
カメは草食性・雑食性など種類によって異なりますが、いずれにせよ糖質を主食とすることはありません。
必要なのは動物性たんぱく質やビタミン・ミネラルであり、団子には栄養的価値がありません。
むしろデンプン過多は消化不良や腸内環境の乱れにつながるため、与える意味がない食べ物です。
🦉 フクロウ(猛禽類)
フクロウをはじめ猛禽類は完全な肉食動物です。
糖質やデンプンを分解する酵素系をほとんど持たず、主なエネルギー源は動物性たんぱく質と脂肪。
団子を与えると消化できず、体調を崩すリスクがあります。
👉 肉以外を与えないことが鉄則です。
🍠 安全に楽しむ“秋のごちそう”リスト
🐶🐱 犬・猫 → 蒸したさつまいもやかぼちゃ(食物繊維+βカロテン)
🐇 ウサギ → 小松菜や大根葉などの生野菜(カルシウム・ビタミン補給)
🐢 カメ → 種類に合わせたフードや野菜を少し追加(消化に負担をかけない範囲で)
🦉 フクロウ → 普段の肉餌を盛り付けで工夫(安心+特別感)
👉 「普段の食事の延長」で工夫することが健康のカギです。
✅ 藤先生のワンポイント
行事食そのものを与える必要はありません。
むしろ「人と同じものを共有しない」ことがペットの体を守ります。
一方で、ペットに合った食材を“十五夜風”にアレンジする工夫は、飼い主さんとの絆を深めます。
秋の夜長、満月を眺めながら──
人はお団子を、ペットはその子に合ったごちそうを。
これこそが人とペットの健やかな共生です。
📸 本記事に掲載する写真風イメージは、筆者監修のもとAIで生成したものです。
2025 / 09 / 03 09:00
🍐 梨と鶏むねのさっぱり煮 ~人も犬も一緒に、残暑をいたわる“共食レシピ”~

暦の上では秋。
まだ暑さの名残はあるものの、店先には梨やきのこなど秋の恵みが少しずつ並び始めています。
そんな季節におすすめしたいのが「梨」を使った一皿。
梨は水分と食物繊維が豊富で、夏の疲れをやさしく潤してくれる食材です。
鶏むね肉と合わせれば、低脂肪・高たんぱくのヘルシーメニューに。
人も犬も同じ食卓で楽しめる“共食”としてぴったりです。
📝 材料(ヒト2人+小型犬1頭〔5kg想定〕分)
鶏むね肉(皮なし)150g … 約35%
👉 犬取り分:10〜15g
梨(皮をむき角切り)180g … 約42%
👉 犬取り分:25g前後
にんじん 50g(細かくカット) … 約12%
👉 犬取り分:7〜8g
小松菜 50g(下ゆで・刻む) … 約11%
👉 犬取り分:7〜8g
水 300ml
(固形総量=約430gとしての比率)
🍳 作り方
◇共通下ごしらえ
・鶏むね肉:皮を除き、熱湯でさっと湯通しして余分な脂を落とす。
・にんじん:細かくカットし、熱湯で約8分下ゆで。
・小松菜:下ゆで後に流水で冷やし、水気を絞って刻み、シュウ酸を減らす。
・梨:皮をむき、小さめに角切り。
◇煮る手順
・鍋に水・鶏むね肉・にんじんを入れて弱火で10分ほど煮る。
・梨を加え、さらに5分煮る。
・火を止める直前に小松菜を加えてさっと火を通す。
🐾 犬用の取り分け
・無塩のまま、具材は細かく刻むか一部つぶす。
・スープを多めにして消化を助ける。
・初めて与える場合はごく少量から。
👩🍳 人用アレンジ
・犬用を取り分けた後に、出汁+少量の薄口しょうゆで調える。
・生姜やすだちを添えると爽やかに。
💡 栄養管理の補足
このレシピは「高たんぱく+低脂肪+食物繊維」で残暑の疲れや消化サポートには役立ちます。
ただし、総合栄養食の基準(AAFCO成犬用)を満たすものではありません。脂質や必須脂肪酸、カルシウム、ビタミンD/Eなどが不足します。
👉 あくまで補完食として、主食(総合栄養食)をベースに、週2〜3回・少量を“季節の共食メニュー”として取り入れるのが安心です。
🐾 与え方ガイド
・初回は少量から(取り分けの半量程度)。軟便や嘔吐が出たら中止し、医療機関へ。
👉 特に普段、カリカリ(ドライフード)しか摂取しない子は要注意!想定量の1/5くらいのごく少量から与えて、体調を見ながら調整してください。
・梨の種や芯はNG。
・塩・油は人用のみ。犬用は無塩・無脂が鉄則。
※継続的に取り入れるなら、別日に青魚や良質な脂質を加えて、必須脂肪酸バランスを補うとより安心。
📝 脚注:AAFCOとは?
AAFCO(米国飼料検査官協会)は、ペットフードの栄養基準を策定している団体です。
「総合栄養食」とは、この基準を満たすことでそのフードと水だけで犬や猫の健康維持が可能とされる食品のこと。
日本のペットフードも多くがこの基準を参考に設計されています。
今回のレシピは栄養的に良い補完食ではありますが、総合栄養食ではありません。
共食を楽しみつつ、毎日のごはんは総合栄養食を基本にしましょう。
※画像は藤監修のもとAI生成
2025 / 09 / 01 09:00
🐾 ペットフード業界に学ぶ「持続可能な商品開発」の4つの視点

一度は手に取ったのに、気づけば買わなくなっていた商品。
皆さんにも、そんな体験はありませんか?
実務で見ると、ペットフードでも食品でも、同じ現象が繰り返されています。 ここ数年、ペットフード業界では「無添加」「機能性」「健康志向」を掲げる商品が急増しました。 ペットフード市場全体は拡大を続けていますが、その裏で——思ったほど継続しない商品も少なくないのが実情です。
実際、当所には毎月50件前後のペットフードOEM相談が寄せられますが、その99%が「無添加」や「機能性」を前面に掲げた企画です。
もちろん意図は理解できますし、製造もお受けしています。 ただ本音を言えば、**「開発段階から設計までご一緒できれば、もっと継続性のある商品にできるのに」**と感じることが多いのです。
それだけ商品設計前の「企画」の視点が、一方向に偏っているということでもあります。
これは食品業界でも同じです。 「コラーゲン飲料」「DHA入りおやつ」など短期ブームで消えた商品がある一方、乳酸菌飲料や高齢者向け栄養補助のように、生活文脈や継続体験まで設計に組み込んだ商品は今も市場に根づいています。
👉 特に機能性表示食品では、制度開始からの累計届出件数は8,000件を超えますが、そのうち1,600件以上が撤回されています。
つまり「一度は市場に出たが、続かなかった商品」が相当数存在するということです。
◇持続可能な商品開発を支える4つの視点
1️⃣ 栄養設計
成分を“入れる”のではなく、効き目に届く用量を継続して届けられるか。 総合栄養食や日常摂取との整合が前提です。
2️⃣ 市場適合性
「需要がある」だけでは成立しません。 既に形成された 価格・品質・供給体制=相場 に、供給スケールや原価構造が持続適合できるかが成否を分けます。
3️⃣ 品質管理
“無添加”や“常温流通”を掲げるほど、酸化・保存安定性・包材コストのせめぎ合いはシビアになります。 品質保証の仕組みを設計段階から組み込む必要があります。
4️⃣ 消費者価値(イミ消費)
素材や機能性だけでは差別化になりません。 「なぜその商品を選ぶのか」という継続理由を、**用途(誰のため)×使い方(どの期間)**まで言語化することが不可欠です。
✅ ペットフード市場は今も拡大を続けています。 しかし「無添加」「機能性」だけでは、残念ながら継続購入を生む力には足りません。 だからこそ、栄養・市場・品質・価値を統合的に設計する力が、商品を短期ブームで終わらせず「持続可能」に育てる条件だと思います。